1.群れ飛ぶ雪虫(ゆきむし)

富良野の森で取材した雪虫(ゆきむし)が、Newton 2012年1月号(ニュートンプレス,2011年11月発売)に掲載されました。短く再編集して紹介します。より詳しくは雑誌をご覧ください。
北海道の10月上旬から中旬、平地の木々が紅葉して葉を落とす頃「雪虫」と呼ばれる虫が舞う。雪虫はアブラムシの仲間だ。針のような口で植物の汁を吸って生活する。雪虫には何種類かのアブラムシが含まれるが、今回登場するのは北海道の各地でよく見られるトドノネオオワタムシ(Prociphilus oriens)。
上の写真は画面左のヤチダモで子どもを産むために集まってきた雪虫。夕暮れの光が小さな虫たちを浮かび上がらせてくれた。雪虫は小さな命をリレーするように1年のうちに次々と世代を重ね、木から木へ旅をして暮らしていた。
2.ロウ物質をまとっている

トドノネオオワタムシの体長は3~4mm。白く綿のように見えるのは体内から分泌されたロウ物質。この白い姿で雪のように舞うので「雪虫」と呼ばれる。
3.雪虫からオスとメスの子どもが生まれる

ヤチダモへやって来た雪虫はしばらく歩きまわっているが、やがて樹皮のくぼみや割れ目で動かなくなるとオスとメスの子どもを産む。緑色はオス、橙色はメス。雪虫がたくさん集まる木では樹皮の一部が雪虫によって埋め尽くされるときもある。やがてメスによって越冬卵が産みつけられ、冬を迎える。
4.幹母と子ども

春が来ると、越冬卵から「幹母(かんぼ)」と呼ばれる一匹の虫がふ化する。幹母は樹液を吸って成長し、褐色に黒の縞模様がある姿になる。半透明の小さな虫は幹母から生まれた子どもたち。何種類かのアリが、トドノネオオワタムシが尻から出す甘露を求めてやってくる。
5.ヤチダモからトドマツへ移動

幹母から生まれた子どもたちはヤチダモの葉や枝先で成長して、初夏、翅が生えた虫になる。トドマツに引っ越すためだ。ヤチダモの樹液の養分が少なくなるためだという。
トドノネオオワタムシはヤチダモとトドマツという科の違う樹木の間を一年のうちに行き来する。季節によってまったく違う植物を選ぶ不思議な生態だが、アブラムシの一部はこのような生活をすることが知られている。
6.トドマツからふたたびヤチダモへ

根から樹液を吸う虫たちのとなりに、翅を持った「雪虫」が見える。トドノネオオワタムシは夏の間、このようにトドマツの根で樹液を吸ってくらしているが、秋になると翅のはえた虫になってふたたびヤチダモへ戻っていくのだ。 ・・・おしまい